冷凍保存愛


 一瞬小堺の動きが止まり、振り返ったその顔は驚きと恐怖で強張っていた。

 道子が「小堺!」と声をかけたのと同時に小堺は路地の奥へとダッシュしていた。

 待て! と叫びながら走り、手を伸ばした道子は宙をつかむ結果に終わったが、小堺の手には黒いエプロンが握られていた。ここでバイトでもしているのだろうか。バイトは禁止なはずだ。



「これってさ、ちょっと」



 震える声の羽都音は小堺が蹴っ飛ばしていた何かに目が釘づけになり離せなかった。


「うわ」


 小堺に逃げられた道子は急いで羽都音のもとへ走り、そこを見て息を飲んだ。

 二人はしばらく茫然とその場所に目を落としたまま絶句し、何も考えられなかった。

 しかしその全身は鳥肌で覆われていた。