「そうだ、ここ、どこなの? 私は確か、確か、小田原先生に電話で『道子が具合が悪いから迎えに来るように言われてた。てかここどこ?」

「そうだね。でもよく考えてみて。道子ちゃんは何日も前から行方不明だったでしょう? そんな状態なのに君にそんなこと言うのおかしいと思わない?」

「……待って、でも道子のお母さんにも連絡したって言ってたよ」

「道子ちゃんがいなくなって親御さんに連絡するのは当たり前だよね、でもなんで君にまで連絡したんだと思う?」

「……道子は特進クラスの夏季合宿に行くって言ってたから、先生のところには勉強の合宿で行ったのかも」


 羽都音はどうしても小田原を疑うことができなかった。

 自分にとっては友達のいないクラスで信用できるのはただ一人、担任の小田原だけだった。 


「うん。学校の先生はね、副業はできないはずなんだ」

「うそ。じゃ、道子がいるっていうのは嘘なの?」

「いや、道子ちゃんはいると思うよ。嘘じゃないと思う。でも、小田原は何か隠してる。そして君はそこに行かないほうがいい」


 ずっと握られている手は離されることはなく、薄暗いどこかを歩いていく。

 相変わらず制服姿のコーヅだけど、行き先を知っているようで、ひたすらにどんどん先へ進む。


「ちょ、コーヅ君、待って」


 コーヅの歩幅に合わせて走るように歩いていたため、羽都音は息が上がっていた。

「ごめん。大丈夫? 少し休もうか」

「休んで大丈夫なの?」

「まだ時間はあるよ。少し座ろう」

 コーヅは羽都音から手を離し、辺りを見回して休めるところがないか探している。

 羽都音は離された手を見て、ゆっくり握りしめた。

 なんともいえない不安が心に押し寄せ、膝に手をついて肩で呼吸をして息を整えた。