冷凍保存愛


 地下?

 地下があるなんて、やはりこの家はおかしい。

 コーヅは肌電球ひとつしか無い、暗く湿っぽい階段を降りきり、奥さんの入っていった部屋に耳を近づけ中の様子を伺った。




「なに? 生徒が訪ねてきてるだと? 誰だ」

「分かりませんが、日に焼けているので運動部かなんかじゃないかしら」

「入れたのか?」

「家の外で大声をあげてインターフォンを鳴らしてましたので、近所に怪しまれるとまずいと思って」

「………Pは大丈夫か?」

「ええ」



 P?

 なんの略だ?

 椅子がきしむ音がドア越しにコーヅの耳に届き、慌ててドアの横に身を隠す。

 ドアが開かれ、そのドアの裏に隠れるように立ち、小田原とその妻が上へ上がっていく後ろ姿を見送った。

 不用心に開け放たれたままのかたちとなった部屋の中へ、神経を集中しながら入り込んだ。