呼び出し音が鳴っているが出ることはない。羽都音がラインを送ってきたのは1時間も前のことだ。もしかしたらもう小田原の家に着いているのかもしれない。
電話に出ないってことは、鞄の中に入れっぱなしか、それとも家に忘れたか、もしくは出られない状態かのどれかだろう。
「行こう」
コーヅと強羅は走り出し、ほぼ全速力に近い速さで校門を駆け抜けた。
守衛に挨拶もそこそこにダッシュして走り去っていく強羅に守衛が何かを叫んでいる。
タクシーをつかまえ、乗り込むが運転手はいかにも高校生な強羅を見て険しい顔をしてお金はあるのかと聞く。
強羅は財布を見せて、ちゃんとあるよ、だから早く! とまくしたてた。
怪訝そうな運転手はまだ納得できないような目でバックミラーで強羅をじろじろと確認し、
「早く!」
強羅が怒鳴り、足をドンと踏み鳴らしたことでバックミラーから視線を外し、やっとメーターを回し始めた。

