ガサガサッと近くの茂みから凄い音がして、私は飛び起きた。
突然の事に驚きながらも、隣を見た。すると、ウルフさんが警戒態勢で茂みを睨んでいた。

「…………マズいな…」

ぽつりと呟く様にウルフさんが言葉を発した。
何が何だかわからない私は、ただジッとしていることしか出来なかった。

「……レイラ、荷物持って何時でも逃げられ準備しておけ。」

声音が普段より何倍も真剣だったから、私は頷いてリュックを音をたてないように背負った。毛布は丸めて小脇に抱える。しまっている時に事態が急変したら逃げ遅れるからね。
微動だにせず、茂みを睨むウルフさんは普段の気の抜ける様な雰囲気は欠片も感じられない。どうしてこうも意識をすぐに変えられるのか、私にはわからない。
ウルフさんが風向きを確かめるかのように上を向いた。風向きを確かめてるっていうのが解るようになったのはつい最近。

「………そうだな、…行くか。」

不意にウルフさんから警戒が消えた。

……は?

「レイラ、行こう。」

自分の荷物が入っているトランクを持って、唖然としている私の隣を素通りした。

意味わかんない。
さっきまであれほど警戒して、今にも闘いそうな感じだったのに……。

動かない私を振り返ったウルフさんは不思議そうな顔をしていた。何で付いてこないんだって言わんばかりの目が私を映す。

「今…行きますよ!!」

「ほらな、また敬語使ってる。」

変なところを指摘された。
昨日、敬語は使うなって言われたばかりだったんだっけ。気をつけないとね、