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朝の空気は、凛としていて気持ちがいい。
5時15分。いつも通りの起床時間。
窓の外はまだ夜の藍色が支配していた。
鳥のさえずりも聞こえない。
それでも、東の山際は白んでおり、朝がすぐそこまで来ていると知らせている。
ジャージに着替え、グラブを脇にはさみ、遥は足音を忍ばせて玄関に降りた。
家族がまだ眠っている中では、かすかな物音さえも気になる。
注意深く外に出て、遥は大きく息を吐いた。
思い切り身体を伸ばし、シューズのひもを結び直す。
準備完了。
遥はもう一度深く呼吸をすると、練習場所に向かって走り出した。
早朝のランニングは、もう日課になっている。
緩やかな坂道をのぼり、橋を渡り、川に沿った道を進む。
普段は車の往来が多く、あちらこちらに『交通安全』だの『この先カーブ 速度落とせ』だの『危険運転追放』だの、色あせた看板が立っている。
わりと新しい『小学生通学路』の看板の真下のガードレールが、大きくひしゃげていた。
2年か3年前、スピードを出しすぎた車が突っ込んだらしい。
運転手は酒を飲んだとか無免許だとか、轢かれた住人がいるとかいないとか、さまざまな噂が流れた。
真相は知らないし、あまり興味もわかない。
修理もされず、そのままの状態で放ったらかしにされてあった。
その脇を走り抜け、車道を横切り、木々に覆われるようにたたずむ石段を駆け上がる。
昇り切った先は公園に続いていた。
遊具は隅に錆びた鉄棒と古ぼけた大きなボードが申し訳なさそうにあるだけで、がらんとしている。
深緑のボードの中心には、オレンジ色で丸印が描かれていた。
見るだけで目が冴えてくる。
『秘密の特訓』を始めたころからずっとあるのに、このオレンジだけは薄れていない。


