身体に緊張に似た力が走る。
「……もしもし」
しばらく沈黙を挟んで、駿の声がした。
少し掠れた低い声だ。
遥はいつの間にか止めていた息を吐いた。
良かった、出てくれた。
「……駿?」
ただ名前を呼んだつもりが、弱い声になってしまった。
なんか、しょぼい。
「おう、遥……。一週間ぶり、だな」
「うん。話すの久々だな。
テストどうだった?」
まだ言いたいことがまとまらず、ストレートに用件を伝える勇気もないので、遥は目的とは違う雑談を投げかけた。
おれって、けっこうヘタレだったんだ。
電話の向こうで、駿が力を抜く気配を感じる。
「うーん、まあまあ、かな。
英語はできたけど、物理と数学はちょっとやばい」
「おい理系、大丈夫かよ」
「やばいかもしれねえ。遥はどうだった?」
「数学のテストで居眠りして、3分の2くらいしか解けなかった」
吹き出す声が聞こえた。
一週間しか空いていないのに、何年も耳にしていない感覚に囚われる。
遥は床に転がしたままのボールを拾い、ベッドに寄りかかった。
「マジかよ、お前数学しか稼げないっていつも言ってたじゃん」
「そうなんだよ。もう既に返却日が恐ろしい」
「俺もだ」


