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ベッドに寝転がり、遥は左腕を枕の下にいれて天井を仰いだ。
右手の中で転がしていた軟球を軽く投げ上げる。
落下してきたところを、投げた形のままの手でキャッチする。
ぱし、と小さな音が鳴る。
もう一度投げ、捕まえる。もう一度上げて……
ただただ繰り返す。
目はボールを追っているけれど、心は別のところへ流れていった。
「遥、知ってる?こうやって」
中学で迎えた、最初の冬の日だったろうか。
一緒に歩いていた駿がふいに立ち止まり、親に買ってもらったばかりだという真っ白なボールを取り出した。
それを暮れなずむ空に向かって投げる。
ボールはある程度の高さまで到達し、同じ道筋で落下してくる。
それを同じ位置で受け止め、駿はにかっと笑った。
「上に投げて、落ちてくるのを捕まえんの。けっこう難しいんだぜ」
「知ってる、先輩が言ってた。
ちょっとでもぶれると、ボールが斜めに飛んじゃって、同じところに落ちてこないんだろ」
「ちぇっ、知ってんのか。やったことは?」
「ない。今日初めて聞いたし」
「じゃあ、やってみなよ」
軟球が放られる。
遥は左手で受け止め、右手に持ち替えて空へ投げた。
ボールはレールをたどっているかのように、遥の右手へもどっていく。
駿が唇をとがらせた。
「そんな簡単にできちゃうなよー」
「ご、ごめん」
「嘘嘘。やっぱすげえや遥は。
さすがピッチャー、ってところだな。
先輩が言ってたんだけど、これをずーっとできるようになれば、ボールのコントロールが上達するんだってさ」
返された軟球を鞄にしまい、駿が歩き出す。
並ぶまで待ってから、遥も一緒に進んだ。
「ずっとって何回?」
「さあ……100回くらい行けば文句ないんじゃねえの?」
「100……」
「そうだ。どっちが先に連続100回達成できるか勝負しようぜ」
「うん、いいよ、負けたらどうする?」
「お、意外と乗り気だな。そうだなあ、負けたら勝った方に一週間肉まんおごる」
「OK、負けないぞ」


