野球は9人ですることくらいしか知らなかったし、駿に対しての苦手意識はまだあったけれど、誘われたことが嬉しくて、遥は藍原ナインの練習について行った。
そこで一から野球を教わった。
他の新入メンバーと一緒に体力テストを受けたとき、遥は遠投でグラウンドの隅までボールを届かせた。
6年生のベストをあっさり抜いた、大記録だった。
見物していた者がそろってぽかりと口を空けるなか、駿だけが得意顔で遥にピースサインを送っていた。
なんだか駿とのびっくり作戦(実際そのようなものは立ててないけれど)が成功したような気分になって、遥も笑い返した。
それからキャッチボールを中心に投球フォームを教わり、5年生の時から、本格的にピッチャーとしての指導を受けた。
徐々に野球に惹かれていった。
3ヵ月経った頃には、完封とまではいかなかったが、長打を出すことは滅多にないほどの力をつけた。
初めての試合は先発でマウンドに立った。
年明け初勝利を喜び合ったとき、駿が拍手をくれた。
「やっぱすごいなあ、清水くんは。
おれも次の試合、絶対にキャッチャーで出してもらうよ」
その宣言通り、翌月の試合で、駿はキャッチャーとなった。
嬉しいことに、遥とバッテリーとしてだ。
誘ってくれた相手と一緒に試合に出られて、たまらなく嬉しかった。
ますます野球が好きになり、それからもずっと駿と野球を続けてきた。
どんなに強い相手でも、駿がミットを構えてくれれば、自信を持ってそこへ投げることができた。
「おれたちって、黄金バッテリーだよな」
いつだったか、練習の帰りに駿がそう言って笑っていた。
遥もそう感じた。
駿とだったらどこまでも戦える、そう信じて疑わなかった。


