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野球と出会ったのは、小学校4年生の秋だった。


家の都合で転入してきた遥は、人見知りがある温和な子どもであった。


野球は好きだったが見る専門。


休み時間に大勢に加わってスポーツをするのは性に合わなかった。


いつも教室の隅か図書室で本を読んでいた。


そこへ声を掛けてくれたのが、当時後ろの席だった駿だ。



「清水くん、いつも本ばっか読んでるけど、外で遊んだりしない?


みんなでドッジボールとかドッジビー、やんないの?」


「え……うん、あんまり、好きじゃない」


「じゃあさ、野球は?」


「野球?」


「うん。清水くん、野球を見るの好きって言ってたじゃん。


プロ野球?それとも甲子園?」


「……甲子園、かな」


「そっかあ、じゃあ、おれと一緒だ」



明朗な性格の駿は、なんだか苦手だった。


他の人と話すよりもずっとエネルギーを使うから、なるべく話さないようにしていた。


このときも遥は相手をしながら、早くどこかへ行ってほしいと思った。



「清水くん、野球しない?あっ、見るんじゃなくて、する方ね」


「え?」


「おれ、藍原(あいはら)ナインって野球チームに入ってるんだ。


清水くん、この間の体育のソフトボール投げ、ぶっちぎりの一番だったでしょ。


あれだけ投げるの上手なら、絶対に選手になれるよ」



そこで駿は立ち上がり、遥の席の前に回りこんだ。


机に手をついて身を乗り出し、にっと屈託なく笑った。



「なっ、一緒に野球やろうよ」