「おかしい」
小倉が突き放すように言った。
隣で遠藤が深く頷く。
秋山が腰に手を当てて唇を尖らせた。
「なにがおかしいんだよ」
「決まってんだろ、清水とバッテリー組むことだよ。
いや、秋山に限ったことじゃない。
両国がやってもおれがやっても大空がやっても、へんだ。
清水のキャッチャーは川口しかいねえよ」
「でも、川口来てなかったじゃん」
ちり、と遥は胸の奥が痛むのを感じた。
駿は来なかった。
投球練習をしながら待っていたけれど、現れなかった。
「あいつ、学校には来てたんだろ?テストだったし。
キャプテンも連絡ないって言ってたから、立派なサボりだね。
あの試合でくじけたのかな」
「秋山!」
遠藤が怒鳴る。
小柄な体格からは想像できない大声だ。
両国と小倉に視線を送られたが、遥は無視した。
やや俯いて、暗闇に表情を隠す。
「なんだよその言い方。川口が……逃げたって、言いたいのかよ」
「大空」
遠慮のない言い方だった。
小倉に小突かれ、遠藤がしまったと口を閉じて遥を盗み見た。
気にするくらいなら、言うなよ、バカ。
「知らねえけど、そうなんじゃねえのか?
テストで一週間挟んでも、ばかすか打たれた清水は来たじゃん。
つまり、そういうことだろ。
だから監督も、溝口だけじゃなくておれまで呼び出したんだと思う。
まあ、おれの考えだけど、間違っちゃいねえだろ」


