残りのピザまんを口に詰めて、秋山は水筒を傾けた。
口を拭って、遥の背中を叩く。
「そんじゃ、清水、そういうことだから」
「そういうことって、どういうことだよ」
「惚けんなよ。お前のキャッチャー、やってやるよ」
帰り道は田畑や空き地に挟まれていて、街灯が少ない。
商店街と学校をつなぐこの道は見通しが良くて、夜になると暗闇がたくさんある。
その半ばだった。
秋山以外の足が止まる。
小倉は右足を出したまま、遠藤は肉まんをくわえたまま固まった。
両国も驚いた様子で、中学からの付き合いの背中を見つめる。
口に含んだあんまんを飲み込んで、遥はぶつかってきた秋山を見下ろした。
「なんだよ、いきなり止まったら危ねえだろうが。
……小倉、なにそれ、空飛ぶ練習か?」
「あっ、アキ。今なんて」
両手をばたつかせ、小倉が秋山に詰め寄った。
遠藤も同じように秋山に向く。
「キャッチャーやるって、どういうことだよ。
まさか、秋山が清水とバッテリー組むのか?」
「おう。ま、まだまだコミュニケーションの方は不十分だけど。
そこはもちろん練習するさ。
才能があっても、練習しなきゃかっこよくなれねえもん」
遥は投球練習を思い出した。
秋山はいつものようにへらへらしていた。
ボールを投げるたびに「言葉のキャッチボールだ」と、返球しながらあれこれ遥に言った。
どう投げろとか、どうした方がいいとか、アドバイスではなかった。
いわゆる無駄口である。
けれども、キャッチャーマスクをかぶり、3年キャッチャーの後藤から借りたミットを構えるときだけは静かだった。
お調子者の姿は影をひそめ、ボールに真剣に向き合う選手としての顔が見えた。
普段から、どのポジションでもそれなりにやれると秋山は豪語していた。
もしかしたら本当かもしれない。
初めて秋山と対峙して、遥はそう直感した。


