来た時間が遅かったせいで、投球練習は30分もできなかった。
山の端に陽が隠れ、空には名残惜しそうに紅が残っている。
普段は練習終了後にも投球練習を行うが、秋山が渋ったので、今日は切り上げた。
ジャージに着替え(ユニフォームでの下校は禁止である)、遥は秋山と両国と学校を出た。
同じ2年生の小倉明宏(おぐら あきひろ)と遠藤大空(えんどう そら)も一緒だ。
帰り道沿いの小さな商店で買った中華まんを食べながら歩く。
「清水、秋山はどうだった?」
あんまんにかぶりつきながら小倉が尋ねてきた。
「うーん、可もなく不可もなく、かなぁ」
「うっわ、エラソー。もう頼まれても練習に付き合ってやんねえぞ」
後ろから秋山が喚いてくる。
こちらはピザまんだ。
その隣に並ぶ遠藤が、八重歯を見せて笑った。
「あはは、自称ユーティリティプレーヤーにも、キャッチャーの才能はないんだな」
「どこがユーティリティだよ」
最後尾で自転車を押して歩く両国が呟いた。
秋山が胸をそらす。
「ひがむなっての、リョウちゃん。
いやあ、おれって罪な男だよなー、チームメイトにまで嫉妬されちゃうなんて」
「誰が嫉妬するか」
「そうだよ、自惚れんなっての」
小倉と遠藤がそろって顔をしかめる。
幼稚園からの付き合いだというこの二人は、時々同じ表情になることがあった。
まったく似ていない双子のようで面白い。


