秋山が真剣に考え込み始めた。
アホか、お前は。
その意味をこめて、遥はまた腕を伸ばした。
さっきよりも強く秋山の腕をつねる。
「あいたっ、清水、なんでさっきからつねるんだ」
「べらべらべらべら、うるさい。何言ってんだよ。
お前の口には舌が何枚生えてんだ、笑い袋の方がまだ静かだ」
くっ。
二人の間で溝口がたまらないといった様子で吹き出した。
神崎も顔をそむけ、必死で笑いをこらえている。
「分かった分かった、秋山の内野への想いはじゅうぶん伝わった。
お前はキャッチャー候補から外してやる」
端から強要するつもりがなかったのか、監督はあきらめたように言った。
露骨なほどに秋山の表情が明るくなる。
本当に、心の底からキャッチャーがやりたくなかったのか。
「あざっす。さすが監督、部員の気持ちを優先してくれるなんてすてき」
「でも、今日は清水の投球練習に付き合ってくれ」
途端、秋山は両腕をだらりと垂れ、「えー」と不満げに唇を尖らせた。
「そんなあ、おれ、一週間ぶりに内野の練習できてるんるんだったのに」
「秋山、あんまりわがままを言うな。監督の命令だぞ」
神崎が眉をひそめてとがめる。
いつもなら監督がバカ野郎と悪態をつくところだ。
しかし監督はそうならず、帽子を外して汗だくになった頭をかいた。
またかぶり直す。


