ノックを副キャプテンの田中誠(たなか あきら)に任せ、監督は四人を連れてバックネットに回った。
呼び出しに過剰に反応していた秋山を、神崎が一発殴り、遥は口を押さえる。
「夏の大会が終われば3年生が引退する。
後藤が抜けると、キャッチャーは川口だけになっちまう。
一人だけでは不安が残る。
そこでお前らどちらかに、キャッチャーになってもらいたい」
「キャッチャーですか」
こくっと溝口の喉が鳴った。
溝口の体格は遥とそこまで変わらない。
身長もとび抜けて高くないし、身体の厚みもそこそこ。
だが、優しげな面輪に反して強い肩を持っていた。
「そうだ。お前、経験者なんだろう?」
「はい、中3のときに一度。
あ、でも試合に出たことはないです……」
「それでもキャッチャーとして引き抜かれたんだろう。
だから自信を持て、隣にいる先輩みたいにな」
秋山が背を逸らし、遥に言った。
「清水、そんなに自信家だったのか」
「バカ、どう聞いてもお前のことだろうが」
遥は腕を伸ばして秋山の尻をつねってやる。
いてえ、と秋山が顔をしかめた。
自業自得である。
「お前はなあ……」
神崎も苦い表情になった。


