「中免?」

「普通二輪です」

「いまはそう言うのか」

 情報古いですよ、店長。言わないけど。

「俺も持ってるんだよ。いまで言う普通二輪だな」

「そうなんですかー」

「一応、乗れるんだもんね。若い頃ちょっと乗ってたし」

「そうそう」

 なんか、意外。犬の散歩でつまづいて足を激しくくじくような人なのに。若い時も想像出来ないし、バイク乗ってるところも想像できない。奥さんが昔も今も綺麗な人だっていうのは分かるけど。

「どこらへん? 一本橋とかやった?」

「また始めたばかりなので、外周ぐるぐるしたたけです。バイク、重いです」

 教習項目って昔も今もあまり変わらないのかなぁ。一本橋コースはたしかにあった。スラロームとか。そのうちあたしもやるだろう。

「タンクを挟んで、バランスで乗るんだぞ」

「ハイ!」

 乗り方は経験者に聞くのが一番よね。ああ、店長が普通二輪免許保持者だったなんて。すぐ近くに居たじゃん、バイク乗ってた人。

「免許取ったら、真白ちゃんに特別弁当作ってあげるね」

「やったぁ」

「俺が若い頃乗ってたのはなぁカワサキの」

 店長が若い頃乗ってたバイクは興味無くて、奥さんの弁当の方が楽しみだ。卒業検定までになんとか、自動車学校のあいつには乗り慣れたい。

 お休みの日以外は、自動車学校に行けない。時間的に間に合わないしね。お店が休みの火曜日と、各週日曜日、そしてたまに貰える不定期の休み。全部のなるべく午前中は自動車学校に当てよう。そしては、早く免許を取ろう。ずるずると延ばしてたって、感覚忘れたり、お金余計にかかったりするだけだ。

 やっぱり筋肉痛になった。腕と足が痛い。普段使わない筋肉を使うからだ。乗ってる時よりも、降りて押してる時の方が辛い。重い。重いよとにかく……あの重さを思い出すと辛くなってくる。「動いて欲しいのに。重くて動かせない」ということがあんなにストレスだなんて。