リュックからヘルメットを出して被る。グローブを出して装着。
CB400よりだいぶ小さいエイプに跨がる。エンジンの振動が感じられる。小さいけれど、確かな動き。今まで縁が無かったのに、1日で2種類のバイクに乗るなんてね。まぁ、原付は「原動機付き自転車」だけど。
「俺が付いててあげるから、大丈夫だよ。乗ってみよう」
光太郎さんのその言葉を吸い込むが如く、深く息を吸って止め、アクセルをちょっと回す。そして、クラッチをゆっくり繋ぐ。自動車学校で乗ったあの重さが無いからか、すうっと前に出た。
「クラッチ繋ぎ方、うまいよ上等だ」
えへへ、褒められちゃった。光太郎さんは、1速のままのろのろ動き出したあたしの隣を、小走りで着いて来てくれてる。
「そのまま止まらないで、あそこの電柱まで行って、Uターンして戻って来れる?」
電柱、あそこ。返事をする余裕が無く、そのまま前に進んだ。ギアを2速に上げ、電柱へ真っ直ぐ走った。電柱でブレーキをかけて止まり、とりあえず足でUターン。自動車学校のよりも軽いから、問題なく方向転換できる。ゆっくりだったけど。ぐるりと回り、スタート地点に居る光太郎さんを目指して、あとは戻るだけ。アクセル、クラッチ……発進。
ガクン!
「わっ」
エンストしてしまった。そうだ、エンストで停止したらギアをニュートラルか1速に戻して、エンジンかけてから発進だ。車だってそうだよ。落ち着いて……。ギアをひとつ踏んで1速、そしてキックペダルを、キック。再び鼓動を戻したエイプは、次は頼むよって言ってるみたいだ。
アクセル、ゆっくりクラッチ。今度は問題無く走り出した。クラッチ切ってギア2速。行くよ、あたしあなたの元に! 光太郎さん……!!
「おかえりー! 上手いよちゃんと真っ直ぐ走ってるし。問題無いよ」
ただいま光太郎さん! あたしちゃんと帰って来れたよ。大袈裟だけど、光太郎さんの笑顔めがけて……! 走ったりしたわけでもないのに、なぜか息切れしてる。
「CBより走りやすいー」
「だろうね、軽いしね。ギア何で走ってた?」
「2速です」
「ちょっと3速出すにはここ狭いもんなー」
そんなにスピードを乗せてしまったら、光太郎さんに向かって突っ込んで行きそう。
「自動車学校でもずっと2速で走ってました」
「最初だからそれでじゅうぶん。ギアチェンジ問題無いし、クラッチ繋ぎも上手いよ。もう1回行ってみようか」
「ハイ!」



