恋ごころトルク


「こんなこと言うとアレだけど、起こせなくても卒業できるよ。学校にもよるけどね」

 そうなんだ、ちょっと安心した。

「実際乗るようになって、バイク倒した時に起こせないと困るってことだよ」

「そうですよね。でも凄い重くて泣きそうです」

「まだ始まったばかりだし、重さは慣れるよ。絶対。大丈夫だから」

 光太郎さんが笑う。なんかそう言われると、大丈夫なような気がしてくるから不思議。単純だよね……。

「じゃあ、裏にちょっと行こう。店長には言ってあるし、教えてあげろーって言われたから」

 なんて良い店なんだ、ここは。


 光太郎さんは、エイプを引っ張って行きながらショップの裏の駐車場に連れて行ってくれた。裏側は、結構広めの駐車場になっていて、2台車が止まっていた。バイクは表に駐輪スペースがあったから、ここは車で来た人用なんだね。

「CB400で練習させてあげたいけど、免許まだだし、ちょっとさすがにそれはね」

「いえ全然! これ乗せて貰うだけでも感謝です」

 今日の復習もできるし、なんてラッキーなの。がんばらなくちゃ。乗れるようになりたい。
 光太郎さんは鍵を差し込んで、エンジンをかけた。CB400とは違った、可愛い音がマフラーから出ている。

「小さいけど、ギアチェンジの練習と、取り回しの感覚とかさ」

 光太郎さん、背が高いからエイプが凄く小さく見えるなぁ。

「今日、どういうのやったの?」

「センタースタンド立てたり、エンジン切って動かしてみたり。あと引き起こしと、後半は外周グルグルしてました」

「そっか。ギアチェンジ、どう?」

「何回かエンストしたんで、まだ全然慣れないです」

「それも感覚で慣れだから、できるようになるよ。エンストなんか初心者あるあるだから」

 優しいな、光太郎さん。あと、気分乗せるのうまいし。あたし褒めて伸びるタイプだからたぶん上手くなるよ、きっとなるよ!