恋ごころトルク


 ちょっと寄ろうかなって思っただけで、光太郎さんに会えると思ってなかった。会えれば良いなとは思っていたけれど。

 光太郎さんは手を振ると、店を出て行った。出て行くと行っても、ミナセ店内なんだけど。


 あたしは急いで残りを頬張ると、コーラで流し込んで、お会計を済ませた。そして階段を下りて、1階店舗に出る。

「じゃああとシーシーバーとパッド終わったら連絡するんで。ありがとうございましたー」

 あ、光太郎さんの声だ。見るとレジのところで接客をしている。光太郎さんはあたしに気付くと、手招きをした。対応されていた男性客は帰っていく。

「お疲れさまです。すみませんお仕事中なのに」

「そんなことないよ大丈夫。どうだった? 自動車学校。いまどのへん?」

「今日初めて。1時間目でした」

「お、今日からかぁ。どうだった?」

 レジカウンターから出てきて、外に行こうと促される。

「意外と乗れるんじゃない? MT車乗ってたならクラッチの感じ分かると思うし」

「そうですねー」

 車はいまほとんど乗ってないんだけどね。あたしは光太郎さんのあとに着いてショップの外に出た。

「今日は走らないと思ってたんですけど、いきなり乗りましょうって言われて、びっくりしました。でも本当、意外と走れるもんですね」

「教習で乗りに行ってるんだからそりゃ乗せられるよ」

 アハハと笑われた。外から整備場の方に回った。中には小さいのから大きいのまでバイクが並べてあって、赤いつなぎのスタッフが2人、作業中だった。

「ちょっとここに居て。危ないから中には入れられないんだ」

「はい」

 そう言うと光太郎さんは、1台の二輪車を動かして、移動させ、戻って来た。

「ちょっとさ、時間あるなら裏の駐車場で練習しようよ」

「ええ?」