恋ごころトルク



 痛い腕と足を引きずって……大袈裟だけど、だってそんな感じなんだもの。時間はお昼前だ。

 明日、筋肉痛になりそう。もう既に痛いけどね……今夜はゆっくりお風呂に入って寝た方が良いかもしれない。

 ヘルメットを抱えて、さぁ午後からどうしようか。お買い物、友達とお茶……友達つかまるかな。映画? いやいやひとりじゃつまらない。

 お腹は空いてるんだよね。
 ピコンと電球が点いたように、脳裏に浮かぶよ。ミナセに行こうかな。しつこい? だめかな。行き過ぎかな。どうだろう。でも、カフェが併設されてるって言ってたし、そこでちょっと腹ごしらえして、それくらいなら良いよね。別に光太郎さんに会えなくても良いんだ。もちろん会えれば嬉しいけど……。

 来週の教習予約を取り、飲み終わったお茶のペットボトルをゴミ箱に放ると、駐輪場へ向かった。朝から曇ってて、ずっとこの感じだな。まぁ雨が降らないだけ良しとしよう。

 ヘルメットをリュックに入れ、自転車に跨る。さっきまで重い鉄に跨っていたわけだから、なんか変な感じ。ペダルを漕いで、道に出た。


 自転車で感じる風と、バイクで感じる風、種類が違うな。これはバイクに乗ってみないと分からないことだ。あたし、ちょっと新しい世界に入ったな。

 ちょっと鼻高々で自転車を走らせ、信号機、横断歩道を何個か、ぐいぐい走って、もうすぐバイクショップ・ミナセだ。

 曇り空でも看板は青い。お昼ちょっと前だけど、光太郎さんはお弁当買いに行っただろうか。


 ミナセの前まで行って、自転車に乗ったままぐるりと見回す。整備場があって、バイクスペース、グッズスペース。2階建てで、よく見ると「cafe minase」という小さい看板が付いている。ええ、本当だ。カフェなんてあったんだ。2階かな……?

 あたしは前回と同じところに自転車を止めて、まずはショップに入らず、外からカフェを探す。ああ、やっぱり2階だと気付く。窓からなんかそれっぽいライトとか、テーブルが見えたからだ。

 店内に入ると、バイク用品があって、あとあっちにはバイクがずらっと。「いらっしゃいませー」と声が聞こえる。男性2人組のお客さんが見えた。

 ええと、そしてカフェは……ああ、やっぱり2階。3回目の来店だもんね。心に余裕もできて、まわりが見えるようになってきた。案内と看板も見つけられる。矢印と「カフェはこっち」みたいなのが書かれたポップ。そっちに行くと、階段があって、どうやらここの先にあるようだ。階段を登り切ったあたりにカフェボードも出ている。あ、良い匂い。食べ物の匂いだ。余計にお腹が空いてきてしまう。