恋ごころトルク

秋空は晴れ渡って、とても気持ちが良い。残暑が続いているけれど、寒いよりは良いなぁ。でもやっぱりあたし、夏が一番好きです。

「いらっしゃいませー」

「日替わりひとつと……豚しょうが焼き丼ひとつ」

「はい、かしこまりました。少々お待ちくださいね」

 今日の日替わり弁当は、焼き鮭、煮物とサラダ、茄子の味噌炒め。ホワイトボードに書いてある。あたしが書いたんだけど。

「日替わりひとつ、豚しょうがひとつです」

 厨房で忙しく動く店長と奥さんに注文を伝える。

 サクラクックは今日も忙しい。お天気が良いので、いつもより倍速で動けそう。あたしは単純だ。

 容器にご飯を盛りつける。漬け物と、煮物も。店長はフライパンで豚しょうがを、奥さんは焼き鮭や茄子の味噌炒めを菜箸で盛りつけている。

 いい香り。炒め物をする美味しそうな音。

「こっち置いておきます」

 ご飯を盛りつけた丼の容器を、日替わり弁当の容器の隣に置く。「豚しょうが行くよー」という店長の声を聞く。

 日替わり弁当の蓋をして輪ゴムで留めていると、奥さんが隣に来た。

「赤いつなぎの彼、最近来ないんじゃない?」

 奥さんは、光太郎さんがあたしの恋人だっていうことを、知っている。最初話した時はびっくりしていた。当たり前か……。

「はい、いまはあたしのお弁当を持って仕事に行ってますから」

 奥さんは口を開けて、驚いたように笑った。

 サクラクックの豚しょうがみたいに美味しくはできないけれど、でも、光太郎さんの為に、あたしはお弁当を作る。



 一緒に、歩いて行く為に。あたしが、あなたの心の在処になる為に。

「すみませーん。注文お願いしまーす」

「いらっしゃいませー!」




        了