恋ごころトルク

「んじゃあ、せっかく海まで来たんだから、海岸沿い帰るか。ちょっと遠回りだけど」

 バイクに戻ってから、そう言われる。来た道をそのまま帰るよりも、その方が楽しい。遠回りだって構わない。


 エンジン音と振動。キラキラする景色。青い空と光太郎さんの背中。光太郎さんの匂い。今日が雨だったとしても、それでもきっと楽しかったことだろう。このまま帰りたくない気持ち。また、こうして光太郎さんと出かけたい。

 あたし達の左側には、太平洋が見えていた。広くて、青くて。涙が出そうだよ。
 これから先もずっとずっと、この景色を光太郎さんと一緒に見たい。
 赤信号でバイクが停止した。光太郎さんが少し横を向いた。なにか喋ろうとしている。

「なぁ!」

「なーに!」

 信号が青に変わった。ブゥンとアクセルがふかされる。

「このままなぁ、さらってどっか行っちまうか!」

 ギアが入って、発進した。

「なんてな!」

 光太郎さんも、楽しかったのかな。今日この時間が終わってしまうことを、寂しいと思ってくれているのかな。あたしと同じように。

 さらってくれて良いよ。どこにだって連れて行って欲しい。一緒が良い。あたしは光太郎さんのそばに居たい。

「……大好き」

 光太郎さんの温かい背中に向かって、あたしは小さく、そう声をかけた。

 一緒に、これからもずっと一緒に。

 真っ直ぐ光太郎さんを見て行く。楽しみは2倍に、悲しみや辛さは半分こに。そうできたら良い。大変なことたくさんあると思うけれど、ひとりよりふたりが良いよ。


 ねぇ、光太郎さん。



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