恋ごころトルク

 ここは天国か。


 うそつき! ゆっくり走るって言ったのに! 失禁する! してるんじゃないかもしかしてどうしよう!

「うおおおおおおおもっとゆっくりいいいい」

 交差点を左折して2車線道路へ出ると、加速して車を追い抜いていく。

 光太郎さん、あたしが後ろに居るって分かってる? 忘れてるんじゃないの?

 真白、後ろに居るんですけどねぇちょっと。

 赤信号で停車する。光太郎さんに全力でしがみついていたから、グローブの手が強ばっている。

「だいじょーぶか?」

 光太郎さんが頭を後ろに向けて、言った。少し大きな声を出さないと、聞こえない。

「怖い! 楽しい!」

 どっちだよ。

「はは」

 信号が青に変わる。



 天気が良いせいか、よくライダーとすれ違う。

 みんなピカピカのバイクに乗っているけれど、やっぱりうちの光太郎さん&ゼファーが一番格好いいと思う。

 町並みが変わり、だんだんと建物が低くなって行く。松の木がたくさん見えてきて、心なしか潮の香りがする。

 ゆるいカーブの先に、見えた。海だ。

「海ー!」

 聞こえているかどうか分からないけれど、そう叫んでみた。

 海辺の観光地。平日だからか、そんなに混雑してはいない。

 景色に目を奪われていると、スピードダウンから華麗に斜線変更し、コンビニに入って行った。
 ひと休みといったところだろうか。

 エンジンをストップさせると、股の間の振動も止まる。あたしは先にゼファーから降りた。ふう、数十分ぶりの地面。

 光太郎さんがバイクから降りて、グローブを外しヘルメットを取る。

「疲れただろ」

 眩しそうな顔をしてそう言うと、ボディバッグを探る。

「慣れないしねードキドキしたぁ」

「ちょっと俺、喉乾いた」

「あたしも。買ってこようか」

「俺も行く。ちょっと待って」

 キーを抜いてちょっと背伸びをした。あたしはグローブを外してジャケットのポケットに入れた。

 コンビニで飲み物を買い、バイクの元へ戻る。

 緊張とテンションが上がりっぱなしだったせいか、喉がカラカラだった。気温も高く、簡易プロテクター装備のジャケットは、春夏用だけど熱く感じる。


 半袖で乗れば気持ち良いんだろうなぁ。でももしものことを考えると怖くて乗れない。せめて長袖……でもプロテクター欲しいよ。

 光太郎さんも、薄手のジャケットだけど暑そうだ。