恋ごころトルク

 *

「俺の後ろは特等席だから、心して乗るように」

 彼はそう決め台詞を言ってヘルメットを被り、エンジンスタート。

 ドドッドドドド……胸に響く音が鳴り出した。上を見れば真っ青な空。横を見れば長身にヘルメットの光太郎さん。紺色のジャケットが似合っています。とても素敵。

 ここは天国か。

 ニヤニヤしながら過ごしているうちに、光太郎さんとバイクでお出かけする当日になってしまった。

 新しいデニムでも買おうと思っていたのに! スニーカーもいまいちだし、ライダーブーツ欲しかった……後ろに乗るだけだけれど……でもほら、ちゃんと……ブツブツ。

 光太郎さんのゼファー750。茶色のタンクに黄色いライン。少し跳ね上がったようなシートは黒光りしてピカピカしている。
 
「タンデムバー付けといたから、ここ掴んでて」

 シートのところにシルバーの金具が取り付けてある。なるほど、これなら乗ってて安心だ。掴まるところがあるだけで安心感が違う。

「教習所で乗ったから分かると思うけど」

「うん、大丈夫。光太郎さんの運転だもん」

「ゆっくり走るから」

 光太郎さんは長い足を上げてバイクに跨った。親指で、後ろに乗れと合図をする。あたしは光太郎さんの肩に手をかけて、ゼファーに跨った。

 やばい。心臓破れそう。

「ちゃんと掴まってろよ!」

 ブゥン!

「うえええええええ」

 変な声が出た。でも仕方無いよ! 光の速さなんじゃないの!? やだ首が持って行かれる!

 良いお天気。大好きな光太郎さんの背中に掴まって、彼の大事なゼファーの後ろ、乗せて貰って。マフラーから出る音とヘルメットから見える景色……。