恋ごころトルク


「バイクは、乗らないですか?」

「……そうですねー。乗らないです。分からないんで……」

「女性はなかなかねーそうですよね。でも、何かありましたらうちに……あ、来た」

 ボロロロロロ、言葉で表現するならそういう感じの音が聞こえて、ショップの裏側から1台のバイクが現れた。黒い大きなバイク。

「ちょうど戻って来ましたね。あいつがサクラクックさんのお弁当が美味しいって言うから、今日みんなで食べようかって話になったんですよ」

「あ、ありがとうございます」

 そんな話をしている間に、あたし達の前にバイクが停止した。目の前にすると、予想以上に大きいな……。大型バイクって言うのかしら。足を前に投げ出して乗るタイプの、こういうバイクってなんて言うのかな。それはどうでも良いんだけど……なんていうか……。

「か、かっこいい……」

 思わず口から出てしまった。格好良い。なんて素敵なの。音も心地良いし、キラキラピカピカしてる。生きてるみたいだよ。音も、とっても、胸に響くっていうか腰に響くっていうか、なんて表現したら良いのか分からないけど、ぞくぞくしてくる。

 実際バイクをこんなに間近で見るのは初めてかもしれない。だって、身近にバイク乗りが居ないし、道路を走ってるのを見かけるだけだから。どこか駐車場に止まっていたって、興味が無いからあんまりじっくり見ないし。

「でしょう、バイク、格好良いでしょう」

 あたしのひとりごとを、つなぎスタッフさんは聞いていたようで、ニコニコしながら言った。

 格好良い、格好良いよ。
 跨ったままで、ヘルメットを脱ぐその人は、光太郎さんだった。やばい。なにそれ格好良い。映画みたい。バイクの映画観たこと無いけど。

「マフラー変えたものなんですけど、確認の為にちょっとぐるっと走って貰ったんですよ」

「はぁ……」

 マフラーってあの2本突き出てるやつね。それぐらいは分かる。

「店長、大丈夫っすね」

 え? 店長? このつなぎの人、店長さんなの?