商店街をすり抜けて、大通りへ出たら左折して、そして真っ直ぐ。10分……15分くらい走ったら着くだろうか。

 良いお天気だ。仕事が無ければ河原でもお散歩したい気分。光太郎さんのスクーターはもう行ってしまっただろうか。見えるわけ無いよね。

 バイクショップ・ミナセ。ネットで1度調べたことがあるだけで、実際に行ってみたことはない。そこまではちょっとね……いくらなんでもしないよ。用事無いし。なんかね、カフェが併設されてるんだよね。それって素敵。

 交通量の多い国道を横目に、ひたすら自転車を漕ぐ。アパートと反対方向だ。光太郎さんはあの黒いスクーターで通っているのかな。どこに住んでるんだろう。まさかこんな風にお邪魔することになろうとは。ドキドキする。うわぁドキドキするうう!!

 ドキドキの興奮は息を余計に上げさせる。いけない。落ち着かなくては。なめこの味噌汁煮立っちゃう。

「あ、あれだ」

 国道を挟んで向こう側、青に白い文字で「バイクショップ・ミナセ」と書いてある看板が見える。青空に映えますなぁ。ああ、ドキドキする。横断歩道は……ああ、ちょっと向こうだな。ミナセを通り過ぎて、ちょっと見る。ショップに入れば、誰かに会えるだろう。できれば光太郎さんが良いけど。

 少し過ぎたあたりの横断歩道を渡る。あとはミナセまですぐだ。

 青い看板。2階建てのわりと大きな建物。バイク用品らしきものがある店内。それと、バイクを置いてるスペースがあって。ガレージには数台のバイクが並んでいる。整備場なんだろうな。オイルの匂い? タイヤの匂いかな。

 あたしは自転車を止め……ここで良いかな、邪魔にならないよね。お客さん入るのかな。自転車かごのなめこ味噌汁を取って、緊張しながら店のドアを開けた。
 
「いらっしゃいませ」

 男性スタッフが声をかけてくる。どう見ても場違いなあたし。黄色いエプロンと三角巾。バイクに乗るような感じじゃない。自転車で来ました。

 奥には別のスタッフも居る。お揃いの青いTシャツだから、あれが制服なのかな? 看板も青、制服も青。