天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~

 自信、か。
 何をするにしても自力で生きていく以上、自信というものは必要だろう。
 でも自信なんて、私の中のどこをどんなに覗き込んでもミジンコ一匹分も見当たらない。
 20倍鑑定ルーペどころか電子顕微鏡レベル。生物学分野よ。ナノレベルの微小さ。
 お姉ちゃんはもう領域が違いすぎて比較対象外としても、詩織ちゃんと見比べて、自分と彼女は違うんだと思い知る。

「チラっと見たけど、素晴らしいサファイアとルビーだったね」
「あ、はい。どちらもすごく綺麗で素敵でした」
「高価なサフィアとルビーだと聞いてたから、ひょっとしたらスター効果の見られるものかと思ったけど」

 スター効果? あぁ、スターサファイアとスタールビーね。
 光の加減で、石の表面に星のような数条の光がみられる効果のことだ。
 このスター効果が見られる宝石はとても珍重されていて、お値段がグーンとアップする。

「あれはね、中にルチルという針状結晶が入り込んで交差しているんだ。交差が2方向だと光は4条。3方向だと6条」

 そのスター効果が見られる石は、カボションカットというツルッとしたドーム形にカットされる。
 そうしないとせっかくの効果が肉眼で見られなくなってしまうからだ。

「ところで聡美さん、知ってる? サファイアとルビーの関係のこと」

 晃さんが微笑みながら、いつもの穏やかで楽しそうな態度で優しく質問してきた。
 彼の様子が今までと全く変わりないことに、私は胸を撫で下ろす。