天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~

 うわ、恥ずかしい。絶対にだれかに見られた。
 歯を食いしばって痛みと羞恥心に耐えていると、聞き慣れた声が頭の上から聞こえた。

「だいじょうぶ!?」

 反射的に顔をあげ、声の主を確認した私は、驚いて目を丸くした。

「晃さん!? 来てたんですか!?」
「うん。招待状をもらってたからね。それより聡美さん、だいぶ派手に転んじゃったけど、平気?」
「は、はい。だいじょ……いででで!」

 とっさに立ち上がってだいじょうぶさをアピールしようとしたけど、どうやらそうだいじょうぶでもなかったようだ。
 ヒザと足首が痛い。これ、捻挫かな?

「無理して動かないで。ちょっとそこのベンチに座って様子を見よう」
「はい」

 肩を貸してくれる晃さんの体にもたれかかりながら、近くのベンチまで移動する。
 背広を通して伝わってくる彼の腕の逞しい感触と、私の肩に回された大きな手にドキドキしてしまった。
 妙に周囲の目を意識しちゃって、必要以上に足をヒョコヒョコ引きずったりして。

「さあ、ゆっくり座って。かなり痛む?」
「いえ、それほどでもないです」

 ふたり並んでベンチに腰掛けると、あの噴水を眺めた夜を思い出す。
 そして同時に彼からの誘いを断ってしまった件を思い出して、かなり気まずい。
 晃さん、不愉快な思いをしただろうな。ここでまた謝った方がいいかな?

「盛況だね」

 何と切り出せばいいか悩んでいると、晃さんが会場の方を見ながら話しかけてきた。
 救われたような気がして、さっそく会話に乗っかる。