感情を簡単に表に出さない分別くらいは身につけているのに。
 その辺は優良コンシーラーなみのカバー力だ。なにせ『鉄仮面』の女なんだから。
 だいたい、そんなに感情が顔に出るタイプなら、今頃私と詩織ちゃんの関係ってかなり悪化しているはずなんだけど。

「俺、聡美さんの感情の動きがわかっちゃうんだよ。考えていることがなんとなく伝わってくるんだ。ちなみにさっきのお店で会計するとき、めちゃくちゃ悩んでたでしょ?」

 晃さんはクスクス笑いながら、楽しそうにあたしを見ている。
 侮れない、この人。さすがは宝石鑑定士。
 石の内面だけじゃなく、人の内面まで見抜く観察力に長けている。ただ爽やかなイケメンってだけじゃない。
 ……でもなんだか、嫌だ。嫌だっていうか恥ずかしい。

 もしかすると、今日ずっと私がソワソワ浮き浮きしていたのもバレてたんだろうか?
 男性と一緒に食事するのも初めてだってことも、感づかれているのかもしれない。
 今まで男の人に、一度も相手にされなかった女の子なんだって思われたろうか。
 彼氏ひとりできたことのない子だって思われてしまったろうか。