天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~

「お疲れ様です。晃さん」
「あ、聡美さん。お疲れ様……」

 笑顔で挨拶を返してくれた晃さんの表情が、突然ビシリと固まった。そして……。

「うわあ! やめろおぉーー!」

 もの凄い形相で、晃さんがこっちにドドドッと突っ込んでくる。
 私は目を丸くして硬直してしまった。

「よせーーーー!」


 そう叫ぶなり、晃さんが私にドーンと体当たり。
 その反動で手から吹っ飛んだエメラルドリングを、晃さんがパシッと両手でキャッチした。
 で、私は当然、そのまま後ろに引っくり返る。
 まともに床と激突した後頭部に、『ゴーンッ』という除夜の鐘のような衝撃と激痛が走った。
 か、かなり、痛……いん、ですけど……。

「なにを考えてるんだ! エメラルドを超音波洗浄するなんて! 多孔性でフラクチャーの多い宝石を超音波にかけたら割れるだろうが!」
「う……いたた……」
「オパールやトパーズやペリドット、タイザナイトなんかも超音波は厳禁なんだ!」

 夢中で手の中のエメラルドの状態をチェックしている晃さんに、詩織ちゃんがおそるおそる声をかける。 

「あ、あのぉー。晃さん?」
「なんだ!?」
「聡美ちゃん、目ぇ回しちゃってるみたいですよ?」