天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ～宝石王子とあたしの秘密～

「父親や兄が冷淡でさぁ、家族愛に飢えた、寂しい幼少期を過ごしたらしいよ? 結婚してからも気苦労が絶えなかったんだって。あげく脳梗塞をおこして、自動車事故で急死。まだ５２歳。お姉ちゃんって、そのグレース王妃にそっくりなんだぁ。ふうぅーん」

　お父さんはさっきの上機嫌が嘘のようにムッツリ黙り込んでしまった。
　……じつは私とお父さんは、あまり仲がよろしくない。
　ていうか、ハッキリ言うと悪い。

　お父さんはお姉ちゃんを昔から溺愛している。
　男親にとって、自分の娘がこれほど美しいことが自慢で、自慢で、自慢でならないんだ。
　お父さんの父親としての愛情の大半は、最高傑作であるお姉ちゃんに占められている。
　あまりにも平凡な私なんて、昔から全然眼中になし。
　はっきり口に出してそう言われたことはないけど、親のそういう心理って、子どもは敏感に読み取ってしまうものだ。