天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~

 ドッグンと心臓が爆発した。
 全身の血液という血液が一気に逆流して、凄まじい勢いで私の頭へと向かっていく。そしてその血と一緒に色んなものが暴れ狂った。

 晃さんがこれまで私に教えてくれたこと。
 彼の情熱。彼の笑顔。彼の誠意。
 その全部が、先を争いながら怒涛のように頭上へと駆けのぼった。
 頭の中で限界まで膨らんで、膨らんで、破裂しそうになって、そして私は……。
 ブッチィィーーッと、完全にキレた!

「ちょっと、あんた!」

 ショーケースが割れるんじゃないかと思うくらい、思いっきり平手で叩いた。
 バンッ! と凄い音がしてケースの上のエンゲージリングが飛び上り、栄子主任が悲鳴を上げて腕で押さえる。
 和クンが驚いた顔で立ち止まり、そのマヌケ顔に向かってあたしはドカドカと大股で進んだ。


「さっきから、ずいぶん言いたい放題じゃないの!」


 真正面の至近距離で向かい合い、相手の眼球を貫き通しそうなぐらい本気で睨み上げてやった。
 そんなこっちの態度に和クンも一気に腹を立てたようで、完全に据わった目であたしを睨み返してくる。

「お前、客に向かってその態度はなんだよ?」

 低く脅すような態度は怖がらせようとしている証拠だろう。
 でも私は鼻でせせら笑ってやった。

 ふん! そんなもん怖くもなんともないわよ!

 私はナイフ振り回す変態と、堂々渡り合った女なんだからね!