天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ～宝石王子とあたしの秘密～

　手紙はそれで終わっていた。
　一字一句、漏らさないように目で追って、私は読み終えた。
　途中からもう、涙で視界が霞んでしまって読みにくくて大変だった。
　涙を便箋に落として汚してしまっては大変だから、車のワイパーみたいに、ひたすらティッシュで両目を拭き続けた。
　鼻かんで、涙も拭いて、それを交互に繰り返しながら読んだからずいぶん時間がかかってしまった。

　読み終えた便箋を丁寧にたたみ、封筒に戻して、胸にギュッと抱きしめる。
　晃さん、あなたの『愛している』の文字が、光り輝いて見えたよ。
　わんわん大泣きしてしまいそうなほど嬉しくて、カラカラの砂に染み込む澄んだ清水のように、あなたの言葉は私の心を一瞬で癒してくれたよ。

　晃さんはずっと本物を求めていた。
　でも私が想像していた本物と、晃さんが探していた本物は違ったんだ。
　彼は、自分にとっての本物を探していたんだ。
　そして彼は、それが私だと言ってくれている。

『自分の目で見て、自分で決める』

　その通りだ。彼は自分の言葉をそのまま実践した。
　やっぱり彼の言葉には嘘はない。それを心から嬉しく思うと同時に、戸惑いも感じてしまう。

　本当に私なんかでいいんだろうか?
　今までずっと私は自分の価値を信じられなかったし、誰一人として認めてくれる人がいなかったのに、突然晃さんのような人が現れて戸惑っているんだ。

　彼が私を選んでくれたことに対して、素直に飛び込んで行けない。
　晃さんに選ばれてもいいと思える確証がどこにもない。
　こんな私でいいの？　いいわけないでしょ？　って考えてしまう。