「わ…はやく乗んないと!
あと2分で出発しちゃうよ!」
「やっべ…」
麗奈の声に、俺も慌てて走り出す。
とっさに麗奈の手を掴んだ。
いや…どさくさに紛れて。
俺が引っ張っているからどんな顔をしているのかはわからない。
でも…
ただ、なんとなく、俺らは生きてるんだってことを確かめたくて。
小さい頃お母さんにすがったみたいな…
そんな気持ちで手を握った。
麗奈は特に何も言わずにただ引っ張られていてくれた。
プシューという音とともに流れ込んだ俺たち。
周りの客から鬱陶しそうな目で見られながら、麗奈の手を離し、額から流れた汗を拭う。
「間に合ったー!」
「ってか時間ないわけじゃないんだからそんな焦んなくてよくね?」
「私目の前の電車見送れるほど落ち着いた女じゃない!」
ちょっと、気の強いところがあるようだ。
でも、かえってその方が俺としてもいろいろ話しやすかった。
少なくとも、変になよなよしてる女子よりかはずっといい。

