「あ、すいません。
藤堂汰一の父です。
欠席の連絡入れたいのですが…」
「はい、大丈夫ですよ。
クラス、番号と、お名前の方もう一度お願いします」
「2年5組の藤堂汰一です」
「かしこまりました。
担任の方に伝えておきます」
「はい。
失礼します…」
俺もなかなかやる。
しかし、隣で電話を聞いていた麗奈はクスクスと笑っている。
「なんだよ…」
「いや…
らしいことできるんだなーって思って」
今考えるとちょっと恥ずかしい気もするが、いっそ開き直ってしまった方がはやい。
「お前もちゃんとやれよ」
そう言って携帯を渡すと、麗奈は少し離れたところに行ってしまった。
ま、普通に考えてあんま聞かれたくないよな。
気を取り直し、切符売り場まで歩くと、大人2人分を買う。
それを手に取った時、ちょうど麗奈も終わったのか、こっちに近寄って来て携帯を渡される。
それと引き換えに麗奈の分の切符を渡した。
「ごめん、あとお金返すから…」
「いいよ。
昨日あんなに助けてもらったし」
そう言うと、麗奈はクスッと笑う。
「じゃぁ、ありがたく頂戴します」
そうちょっと大げさに頭を下げて、受け取った。
こういうところは素直なんだなって、意外だった。

