「…んで?」
床で泣き崩れている岩崎をなんとか引っ張りながらリビングに連れ込み、呪い屋の女とともに、ソファーに座る。
まるで小さな子供のように、椅子に座り、膝を抱え込む岩崎はとりあえずそっとしておくことにした。
「えぇ、話をしに来たんですよ」
また同じことを言う女。
「…んなのわかってんだよ」
不機嫌になる俺に、
「またあの恐怖を味わいたいんですか?」
ニヤリと笑う。
「…いや…」
とたんにあの身を引きちぎられたような苦痛を思い出し、顔を歪める。
「ま、今はいいですよ。
なんだかおもしろいんでね」
いつのまにかまた敬語に戻ったことに気づき、ハッとして女を見る。
しかし、女は無意識のようで、ただ妖艶に笑うだけだ。
「…そ」
そっけなく返し、女が話し始めるのを待つ。
すると、
「私は藤堂さん、あなたが話し始めるのを待っているのですが」
そんなことを言い出す。
「いや…
あんだが話したいっていったんだろ?」
もうどうとでもなれ。
その一心で強く出る。
沈黙の中、岩崎がしゃくりあげる声だけが、静かに響く。
「…っく」
何かを話そうとしているのか、急にしゃくりあげる声が大きくなる。
「…ひっく…
そ、その人…っく…」
一生懸命喋ろうとしている岩崎に目を向ける。

