驚いたような顔をするも、またいつもの表情に戻ってしまう。

「…親は」

いやらしい言い方にならないように気をつけながらも、いざ口に出すと戸惑ってしまう。

「いないよ」

そんなことは気にせず、ニコッと笑って答える。

「…私が毎晩血だらけで帰ってくるから。
私のこと恐れて、何か必要なもの取りに来る時しか帰ってこなくなっちゃた」

そう言って、どこか寂しそうな表情を見せる岩崎。

「…親のこと呪ってるんじゃなかったのか?」

いっそ、タブーでもいい。

唯一の仲間の岩崎。

いつかは必ず聞かなきゃいけないことがたくさんある。

「…たしかに、呪ってる。
今も継続で」

俺から視線を外す。

「でもね、そこまで悪影響じゃない。
呪いって、ほんとに一時的なものなの。
例えば、私が汰一くんに、高熱を出させるように、って頼んだとするじゃない」

うん、と頷く。

「そしたら、たしかに死にそうなくらい熱が出るの。
でも、さっき汰一くんが傷治ったみたいに、けっこうすぐ治っちゃってね…
だから、一応次の日には普通に生活できるのよ」

そう、衝撃的なことを言う。

「…じゃぁ、何のためにそんな呪いなんてあるんだよ…
依頼人が、殺すためにあるんじゃないのか?」

気持ちが高ぶり、岩崎に迫る。

「…それはちょっと違うかも。
汰一くん、ちょっと落ち着いて。
着替え終わったら、下におりておいでね」

岩崎も、大事な話だからこそ、ゆっくり話した方がいいと思ったんだろう。

そっと部屋を出て行った。