必死で必死で走った。

どこかわからない。

どう進めば正解なのかもわからない。

でも、走り続ければ絶対外に出られる...

そんな気がした。

息を切らしながらなりふり構わず走り続ける俺の手に、突然わずかな抵抗を感じる。

「汰一さん...」

「麗薇?」

汗びっしょりで、今にも邪気に呑み込まれそうな麗薇。

ゼイゼイと息をしながらも、なんとか俺についてきて、走ってくれている。

しかし、手にさっきとは違う強い意志を感じて、思わず俺も立ち止まった。

「逃げてください...」

「は?」

今逃げてるじゃねぇかよ、とそんな考えがよぎる。

「違くて...」

俺のそんな考えを見抜いたのか、麗薇が続ける。

「私を置いて、逃げてください...」

その言葉を聞いて、一瞬冗談かと思った。

でも、麗薇のこの異様に苦しそうな様子を見て、意味を理解する...