「おい、汰一」

出だしはいつもこうだ。

必ず、変わることはない。

そして…

「何やってんだよ」

こうくる。

「お前しつけぇっての!
って…」

たらりと冷や汗が背中を伝った。

まただ…

また、雄介から、邪気が…

最初こそ、気づかなかったものの、冷静に見たら邪気が溢れ出ていた。

あの苦しんでいた時の麗薇ほどではないものの、見苦しいくらい、背中らへんから黒蛇が顔を出す。

「あっち…いけって…」

いつも出ているわけではなかった。

ふとした瞬間に、いつのまにか湧き出ている邪気。

何がなんだかわからなくて、気が狂いそうだった。

唯一行動をともにしていた麗奈はあんなで。

麗薇とは2ヶ月前に会ったのが、最後。

そして、雄介のおかしな様子は日に日に悪化してきている。

「おい、汰一」

また始まる。

「何やってんだよ」

それには返事をせず、雄介のニヤニヤとした表情を頭から振り切れないまま横を通り過ぎた。

幸いなことに、ついてくることはない。

でも…

あの、呪い屋に行く前のような、明るくて、おちゃらけてて…

そんな雄介は、もうどこにもいない。