男の突飛な発言に、また女は甲高く笑う。


「鬼?
なにいってんの?
パンツ一丁じゃねーし、角も生えてねえじゃん」

「悪いが、現代的な鬼なんでな」

「鬼に現代とかあんのかよ」

「あるさ」


男は悪の権現のような、黒い笑みを見せる。

普通の女子高生であれば震え上がるところである。

しかし馬鹿は風邪をひかぬ、とはよく言ったもので、この女は恐れ知らずと馬鹿の二文字でできている。

女はその悪人さながらの瞳に、魅力を感じた。

セクシーだとか、妖艶だとか、そう言ったふうな魅力だ。


「……ねえ、ちょっと遊ばない?
あたし、スタイルはいいほうなんだ」


女は女豹のごとき視線で、男を舐める。


「はっ、鬼に抱かれてえってか」

「なに、それとも結婚してんの?」

「いいや、独り身だ。
……お前がそう言うなら、お言葉に甘えちまおうか」


男ーーー鬼はネクタイを緩めて、口の端を釣り上げた。



「女の肌なんぞ、何年ぶりか。
鬼ヶ島を取られちまって以来、ろくに抱いてねえな」



舌なめずりをする男に、女はまた、危険な色香にぞくぞくとそそられた。