「こいつに決めた」



消え入りそうな声で、少年兵はサナを指差したのだった。







しかしサナを買ったくせに、彼は名前を教えてはくれなかった。

ボロとなってしまった民族装束を着た少女の手首を掴むや、さっさと地下牢を後にした。

賑やかな商店が立ち並ぶ地上へと出て、兵舎へとサナを連れ帰った。


サナは怯えた。


傭兵に買われた植民地の女がどうなるか……。

火を見るよりも明らかなことだ。


逃げたい。


しかし立ち止まろうとすれば、少年の紅の瞳が、殺気を漲らせてサナを睨みつける。


逃げられやしないのだ。


諦めて、無抵抗になった少女をつれて、少年兵は小股で兵舎へと戻った。