なんとなく、ユキノを見て色欲のような胸のうずきを感じることはある。
しかし、いつもの遊びのように、色気で誘ってから体を貪る気にはならない。
もっと、こう、ずっと大切にしていた古い人形を、抱き上げるような。
そんな扱い方が、彼女には望ましいような気がした。
それからさらに日が経ち街のほうから遠巻きに鐘の音がし、年が過ぎた。
ユキノの肌と同じ白の淡雪が降り積もるとある日。
気がつけば魔法使いは、青い焰が燃える暖炉の前で、その王子のような少女をそっと抱きとめていた。
「お?」
ユキノはわけのわからぬまま、冷たい魔法使いの腕に抱きとめられていた。
ーーーユキノ……。
か細い声で名を呼んで、魔法使いはこみ上げてくるものを言葉にして贈った。
言葉にするのは息苦しかった。
息苦しさにともなって、いじらしさが心の臓を突く。
好きだと言うと、少女は腑抜けたように笑った。
魔法使いは優しいから、俺も好きだと言った。
魔法使いは、ますます少女を強く掻き抱いて、そっと紅い唇に触れた。
抱きしめて、冷たい寝床に倒して、また口付ける。
それを儀式のように繰り返した。
寒がりで冷え症なだけに、寒い夜の苦手な魔法使いであったが、その夜だけは、ほんのりと温かかった。


