*悪役オムニバス*【短編集】




そうしている間に時は過ぎる。

出会った日の春が過ぎ、夏が過ぎ、秋が過ぎて、冬がやってきた。


気がつけば魔法使いの視線は、魔法の書でも、美しい自分の顔でもなく、ひたすらにユキノを追うようになっていた。



魔法使いは人の姿をしているが、其の実、本質は人外のものだ。

だが男か女かで分けるなら、男である。


豊満な肉体の女を見れば、やはり「してみたい」と思う。

だがそれは「好み」なのではない。

所詮、魔法使いにとっては、


「遊び感覚で抱くのに、ちょうど良さそうだ」


程度のものだった。

実際に、魔法使いは街の色男に扮して、何度かそういった女を誘って抱いたことがある。


抱いてみたい、と思った時の胸のうずき。

それがここ最近、ユキノを見るたびに沸いてくるのだった。


(あんな小娘に?)


魔法使いは自嘲した。

ユキノは確かに女だが、女にしては発育が悪すぎる。

胸が平たいのは火を見るよりも明らか。

尻も引き締まっていて硬そうだ。

異性として見るには、色気というものに欠けている。


(私は頭がおかしくなったのかねえ)


魔法使いはその時はじめて、魔法でも解決できない問題に衝突した。