ところが、なんとそこでは、お姫様に毒リンゴを盛った魔法使いが様子を見ていました。
魔法使いは、お姫様を死なせただけでは飽き足らなかったのです。
魔法使いは七つの小枝を小人に変えると、棺桶ごとお姫様を自分の住む暗黒の森へと連れ帰ってしまいました。
魔法使いはさっそく死んだお姫様を棺桶から出すと、魔法でお姫様を蘇らせました。
悪い魔法で心を操られてしまったお姫様は、魔法使いを主だと思い込み、そのまま召し使いとして魔法使いの元で暮らしていました。
「けれど、たまには森の外にも出て見たいな」
ある日、ふとそう思ったお姫様は、魔法使いに内緒で森の外へと散歩に出かけました。
暗い森の外には、美しいお花畑や、小さな街が広がっていました。
お姫様はすっかり夢中になって、森に帰ることも忘れてお花畑を駆け回りました。
そんな時、近くの山から狩りをして帰って来た男の人が、お姫様を見初めました。
隣の国の王子さまです。
「おや、なんて美しい姫なんだろう」
王子さまは雪のように白い肌を持つお姫様に目を奪われました。
そして同時に、
「あれは、隣の国の白雪姫ではないか」
と、思わず呟きました。
淡雪のような美しい姫と評判だったお姫様のことを、王子さまも知っていたのです。
王子さまはお姫様の許へと馬を走らせると、お姫様の手をそっと握りると、
「あなたは隣の国の白雪姫ではありませんか。
なぜそのような粗末な服を着て、ここにいるのですか」
と、聞きました。
魔法で、自分が国のお姫様だということを忘れていた彼女は、事情を王子さまに話しました。
死んでいた自分を、森の魔法使いがよみがえらせたことも、いままでどう生きて来たのかを忘れたまま、森の中で暮らしていたことも、すべて明かしました。