「なにそれ?」

「ああ、どうでもいい話」

そう言うと、手を振ってお姉ちゃんは笑った。

「日本に連れて来ればいいじゃん。日本の方が仕事もありそうだし」

そうだ、それならお母さんたちも少しは許してくれるかも。
我ながら名案だと、私は提案した。

「だめよ、それだけはだめ。彼らにはこのホテルを守る使命があるんだから」

「へ? このホテル?」

「そう」

お姉ちゃんはうなずいてみせたが、私には意味がわからなかった。

「なんで、このホテル?」

私の言葉に、お姉ちゃんは、「ああ」と納得したようにパンッと両手をたたくと、
「そうそう、言ってなかったわね」
とつづけた。