体を起こすと、目の前にソムチャイがいた。

ソムチャイは微笑んで私を見ている。

「ソムチャイ」

もういちど言う。

「そんなに呼ばなくても、ここにいるよ。いつだってここにいる」

「日本語上手になったね」

「実羽の言葉が僕に響くから」

そう言うと、ソムチャイは私の両手をにぎった。

泳いでないのに、やっぱり私たちは海に浮かんでいた。

「私、日本に帰りたくないよ」

なぜか私はそう言っていた。