「気をつける?」

「そう。ウアンは不動産屋でもキュウバンの良くない男。これから、なにするかわからない。・・・だけど、このホテルの支配人として言います、ありがとう」

あごを手からおろして、ソムサックは深く頭を下げた。
“キュウバン”じゃなくって“評判”だと思ったが、黙っていることにした。

「ウウ・・・気をつけるのよ。ありがとう」

お姉ちゃんも頭を下げたのを見て、私は首をふった。

「大丈夫。これで宿泊料がタダになるんだからさ」

「え?」

ふたりがハモって顔を上げたのを見て、私は指を1本立てて口を開く。

「お礼は言葉より現物でね」

ぽかーんとした顔のふたりに、
「じゃ、おやすみ~」
と告げて私は部屋に戻った。