「ですが、若の断りなしには」


若……。


凌牙のことかな。


飯田さんは、少し困った様にあたしと奈央たちを見比べる。


疑っている様子はないけれど、許可してくれそうにもない。


「あたしから凌牙には連絡を入れておきます。飯田さんにはご迷惑が掛からないようにしますから」


若と呼ぶ飯田さんに敢えて凌牙という名前を出し、あたしと凌牙の間に信頼関係があることを強調した。



……そんなもの、まだない癖に。




「……そうですか……」


それが利いたのか、渋々だったけど飯田さんは頷いてくれた。


「本当にすみません」


心の中でも百倍くらい謝って、去っていく黒塗りの車を見送った。



……後で凌牙に怒られるだろうな……。