質素でも2人きりの暮らしは幸せだった。


その生活に変化が生まれたのはその5年後。


お姉ちゃんも人並みに恋をして結婚が決まったから。


相手はとても優しい人で、生い立ちを丸ごと受け止めてお姉ちゃんを愛してくれた。


『一緒に住もう』と言ってくれたお姉ちゃんに甘えるほど、あたしも図々しくない。



だって、結婚したら相手の親と同居。


"コブつき"結婚なんて論外だろうし、金銭的にも迷惑掛けたくない。



今まで自分よりも、あたしを最優先にしてきたお姉ちゃん。


これからは、自分の幸せを第一に考えてほしいと願った。


施設に戻っても友達はたくさんいるし、その方が気が楽。



『あたしなら大丈夫』


17歳の夏休み直前、自ら施設へ逆戻りする道を選んだ。









現実は甘くないと思い知らされたのは、双葉園に戻ってすぐだった……。