「凌牙の女なんかに、絶対なら――」


「双葉だからって、見下したつもりはねえ」


遮るように被された言葉は意外にも穏やかで。


加えて、あたしを見据えている瞳も穏やかで。


「……え……」


あたしの勢いは、受け止められることのないまま宙に浮く。


「言っただろ、車ん中で。双葉の人間だからって見下すなって」


「……」



……言った気がする。


手帳を盗ったと勘違いされた時に。



「だからだよ。

だから、俺の女になれよ」



もう一度同じ言葉を吐いた凌牙は、勢いをなくしたあたしを置いて部屋を出て行った。